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    タイの卒業写真文化|人生最大の晴れ舞台「ルップリンヤー」と写真へのこだわり

    作成日時
    Apr 6, 2026 6:49 AM
    タグ
    タイ🇹🇭
    Thumbnail

    タイの大学卒業式(รับปริญญา:ルップリンヤー)は、日本のそれとは規模もこだわりもまったく異なります。王族が出席する格式高い式典であり、家族総出で参加する一族全体のお祝いでもあります。卒業生たちは式の何週間も前から専属カメラマンを手配し、入念なヘアメイクと衣装で「前撮り」を行います。卒業写真はその後、家の居間に額装して飾られる「人生最大の記念写真」として扱われます。

    タイにおける卒業式の位置づけ

    タイでは大学の卒業率がまだ高くなく、大学卒業は「一族の誇り」「人生のハイライト」として位置づけられることが多い社会的背景があります。式には両親だけでなく、祖父母、おじ・おば、いとこなど親族が大挙して参加し、卒業生を囲んでの集合写真と撮影が一日中行われます。

    もっとも際立った特徴は、多くの名門大学でタイ王族が卒業証書を授与するという点です。チュラロンコーン大学(タイの東大とも称される最高峰)では、長年にわたり王女殿下が直接一人ひとりに卒業証書を手渡してきました。これにより卒業式は単なる学校行事を超え、「王室と直接接する一生に一度の機会」として極めて格式高いものになっています。

    卒業衣装「チュットクルイ(ชุดครุย)」

    卒業式で着用する専用のアカデミックガウンは、タイ語で「ชุดครุย(チュットクルイ)」と呼ばれます。大学ごとに色が定められており、チュラロンコーン大学だけが純白を使うことを許されています——これはタイナンバー1の大学としての特権とされており、大学のブランドアイデンティティの一部になっています。

    男性はガウンの下にスーツを着用しますが、ネクタイの色や靴下の色まで厳格に規定されています。女性は制服の上にガウンを羽織り、式に合わせた正装を整えます。このガウンは購入ではなくレンタルが一般的で、卒業式シーズンには大学周辺のレンタルショップが繁盛します。

    式の当日:カメラマンと写真スポットが溢れるキャンパス

    式が終わると、大学のキャンパスは撮影のために動き出します。大学側が用意した撮影スポットには長い列ができ、卒業生と家族が入れ替わり立ち替わり写真を撮り続けます。

    式当日のキャンパスでよく見かける光景として、個人専属のカメラマンを連れた卒業生がいます。家族が自前のカメラで撮るケースもありますが、「人生最大の晴れ舞台」に対してプロに依頼することへの抵抗感は低く、カメラマンを伴う姿は珍しくありません。

    撮影される側の準備も徹底しています。女性の卒業生は式の数時間前から専門のヘアメイクアーティストに施術してもらい、「360度どこから撮られても完璧に」というレベルの仕上がりで臨みます。スタジオメイクに近い濃さが特徴で、写真映りを最優先に考えたメイクアップが一般的です。

    「前撮り」文化:式よりも前から始まる撮影

    タイの卒業写真文化で特徴的なのは、式当日の撮影だけで終わらないことです。「ถ่ายรูปรับปริญญา(タイループルップリンヤー)」と呼ばれる「前撮り」の習慣が広く普及しており、卒業式の数週間前から専属カメラマンとともに大学構内や屋外ロケーションで撮影を行います。

    前撮りには次のような理由があります。式当日はスケジュールが詰まっており、思うようなタイミングで撮れないことがある。複数の場所・衣装・ポーズで撮影したいが、式当日ではそれが難しい。じっくり時間をかけて最高の一枚を残したい——こうした意識が、前撮り文化として根付いています。

    前撮りでは卒業ガウン姿での撮影に加え、制服姿、私服、着替えを組み合わせることもあります。バンコク市内のおしゃれなスポット、大学の象徴的な建物、公園やカフェなど、ロケーション撮影へのこだわりもSNSの普及によってより洗練されています。

    卒業写真は「家の居間に飾られる」

    タイでは卒業写真を額縁に入れて家の居間に飾る習慣があります。これは日本ではあまり見られない文化です。家族全員の晴れ姿が集まった居間は、その家の誇りと歴史を可視化する場でもあります。

    卒業写真は本人だけのものではなく、家族への報告と感謝の意味を持ちます。特に親が経済的に苦労をして子どもを大学に送り出した場合、その写真は家族全員の努力の結晶として飾られます。写真の撮影にこだわるのは、単なる記念ではなく「家族への贈り物」という意識も背景にあります。

    卒業式周辺のビジネス:プレゼントと物売りの光景

    大学の周辺では、式の当日に向けた商売が活発です。お花やぬいぐるみの花束に加え、お札(現金)を束ねたブーケが売られているのはタイ独特の光景で、「新しい出発への祝福と実用的な贈り物」を兼ねたプレゼントとして卒業生に渡されます。

    卒業証書を保護する透明ケース、卒業式専用のアクセサリー、記念のフォトフレームなど、式の当日を彩るアイテムを路上で販売する商人の姿も卒業シーズンの風物詩です。こうした周辺ビジネスの活発さからも、タイにおける卒業式の社会的な重みが伝わります。

    日本の卒業式との違い

    項目
    タイ
    日本
    式の格式
    王族が卒業証書を授与することがある
    学長・来賓が主催
    参加する家族の規模
    祖父母・親戚を含む一族全体
    両親のみが一般的
    写真への準備
    専属カメラマン・プロのヘアメイク
    スマホや家族カメラが多い
    前撮り
    数週間前から行うのが一般的
    ほとんどない
    卒業後の写真の扱い
    居間に額装して飾る
    アルバムや押し入れに保管が多い
    式周辺の商売
    お札入り花束・各種アイテムの路上販売
    ほぼなし

    タイの卒業写真が示すもの

    タイの卒業写真文化を見ると、写真が「記録」以上の意味を持っていることがわかります。王族主催の格式、家族の誇り、社会的地位の証明、そして将来への出発——これらすべてが一枚の写真に込められます。

    だからこそタイの卒業生たちは、何週間も前から準備し、プロのカメラマンを手配し、最高の一枚を残すことに全力を注ぎます。写真に費やすエネルギーの大きさは、その瞬間の意味の大きさそのものです。