特定のポーズや環境でのニューボーンフォトの撮影には「危険」や「リスク」があると言われています。日本・海外の安全ガイドラインは共通して、うつ伏せポーズ・顔が埋まるポーズ・無理に首や体を曲げるポーズを禁止しており、適切な知識を持ったカメラマンが自然な姿勢で撮影することで、リスクを大幅に低減できると各ガイドラインは述べています。この記事では、日本と海外の安全ガイドラインが具体的に何を禁止し、何を推奨しているかを整理します。
ニューボーンフォトの「危険」とはどういうことか
ニューボーンフォトが「危険」と言われる場合、問題になっているのは主にポーズドニューボーンフォト(Posed Newborn Photography)と呼ばれるスタイルです。カメラマンが赤ちゃんの体をポーズに整え、小道具や布で固定して撮影するこのスタイルでは、新生児の体に過度な負担がかかるリスクが指摘されています。
一方、赤ちゃんが自然に眠っている状態や、家族と過ごす日常の様子をドキュメンタリーのように記録するライフスタイルニューボーンフォトは、無理なポーズを一切行わないため、こうしたリスクとは性質が異なります。
1. 過去に報告されている事故事例
ニューボーンフォトをめぐる事故は、国内外で複数報告されています。以下は、安全ガイドラインや各種メディアで言及されている事例の類型です。
転落・落下事故
カゴ・ベッド・バケツ型プロップスなど、床から高い位置に赤ちゃんを寝かせ、支えなしで撮影した際に転落したケースが報告されています。新生児は「動かない」と思われがちですが、モロー反射(大きな音や刺激に対する反射的な全身の動き)によって予期せず体を大きく動かすことがあります。この反射は生後3〜4か月頃まで続くとされており、支えなしの高所撮影は特に危険とされています。
参照: https://yonka.co.jp/kiken/
首・肩の脱臼リスク
無理なポーズをとらせる際に、赤ちゃんの首や肩に過度な負荷がかかり、脱臼が起きうるケースが指摘されています。新生児の首の筋肉は未発達で、頭を自力で支えることができません。首を横にひねる・後ろに反らせる・前に折り曲げるといった動作は、首への直接的な負担につながるとされています。
参照: https://yonka.co.jp/kiken/
チアノーゼ(皮膚・粘膜の蒼白・紫変色)
おくるみを巻きすぎたり、体を圧迫するポーズをとらせたりした際に、血管や気道が圧迫されて血中酸素濃度が低下し、皮膚や口唇が紫色に変色する「チアノーゼ」が起きた事例が報告されています。チアノーゼは呼吸や血流が妨げられているサインであり、放置すれば重篤な状態につながる可能性があります。
ニューボーンフォトでチアノーゼが起きやすい状況としては、おくるみをきつく巻きすぎているとき、および特定のポーズをとらせたときに血管を圧迫しているときが挙げられています。チアノーゼは一瞬で起きるのではなく、徐々に肌の色が変化していくため、撮影中に赤ちゃんの肌色を継続的に確認することが必要とされています。
参照: https://ertisapni.com/safety/
撮影機材の落下による軽傷
撮影中にカメラやストロボなどの機材が誤って赤ちゃんに当たり、軽傷に至った事例も報告されています。機材の落下は、カメラマンがストラップを着用していない場合や、高い位置から赤ちゃんを見下ろすアングルで撮影する際に起きやすいとされています。
参照: https://hinaninngyou.com/blogs/maternity/false
セルフ撮影でのヒヤリハット
「みのむしポーズ(おくるみでぐるぐる巻き)の撮影を自宅でセルフ挑戦したところ、おくるみを巻きすぎて赤ちゃんの顔が蒼白になりかけた」というヒヤリハット事例が、複数の保護者の体験談として共有されています。幸いいずれも大事には至らなかったとされていますが、セルフ撮影での知識なき模倣がリスクを高めることを示す事例です。
参照: https://hinaninngyou.com/blogs/maternity/false
SNS投稿による画像の悪用
ニューボーンフォトをSNSに投稿したところ、その画像を第三者が無断使用し、違法サイトに転用されたという事例が報告されています。これは赤ちゃんの身体的な安全に関わる事故ではありませんが、プライバシーおよびデジタル安全上のリスクとして、複数の専門家が注意を促しています。
参照: https://hinaninngyou.com/blogs/maternity/false
2. 国内調査が示す現状:Safe Kids Japan・ベネッセ2022年調査
NPO法人Safe Kids Japanがニューボーンフォトのポーズの安全性について問題提起を行い、株式会社ベネッセコーポレーションの協力のもと2022年12月にインターネット調査が実施されました。回答者2,412人のうち1,947人(80.7%)がニューボーンフォトを認知しており、撮影経験があると答えた人は2,183人中581人(26.6%)でした。
撮影経験者のうち約67%は「特に危険なことはなかったので安全性について気になることはない」と回答しています。一方で未経験者の間では「安全性を疑問視する声があるのなら撮影はしない」という回答と、「問題がないから大丈夫」という回答が拮抗する結果となり、認知と安全評価が二分されている実態が示されました。
参照: https://yonka.co.jp/kiken/
3. 医学論文が指摘する睡眠中のポーズリスク
2020年にPubMedで発表された医学論文(新生児ポージングに関するレビュー)では、ニューボーンフォト撮影に関して特筆すべき知見が示されています。
撮影中に多用される白色雑音(ホワイトノイズ)は、新生児の入眠を促すと同時に痛みを感じにくくさせる作用があるとされています。そのため、起きている状態であれば赤ちゃん自身の反射で回避できるような首の極端な曲げ伸ばしが、深く眠った状態では感知されないまま行われてしまう可能性があると論文は指摘しています。
また、首を極端に横向きにしたり過伸展させたりするポーズは、椎骨脳底動脈(脳幹への血流を担う血管)の血流に支障をきたし、のちの運動発達に悪影響を与える可能性があるとも述べられています。
参照: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7758610/
4. 日本の安全ガイドが禁止していること
日本では、ヨンカや日本新生児撮影安全協会(JNSA)などの団体が「ニューボーンフォト安心安全ガイドライン」を定め、無理なポーズや危険な撮影環境をすべて禁止しています。
絶対禁止のポーズ
最も厳しく禁止されているのが、うつ伏せに関するポーズです。頭・顔がクッションや布に埋まるポーズ、頬杖をつくようなポーズ、うつ伏せのまま目を閉じた写真などは、呼吸困難・窒息・SIDS(乳幼児突然死症候群)リスクがあるとして「一切行わない」と明記されています。
また、三角棒ポーズ・ヨガ風のポーズなど、赤ちゃんの首や体を無理に曲げたり、内側から外側にねじるようなポーズも禁止されています。こうしたポーズは首・関節・内臓への圧迫につながるとして、安全ガイドで回避が求められています。
参照: https://yonka.co.jp/kiken/https://hinaninngyou.com/blogs/maternity/false
撮影環境・条件に関する禁止事項
床から30cm以上高い場所(カゴ・ベッド・台・撮影用プロップスの上)では、必ず手で支えることが義務づけられており、「手離し」撮影は禁止です。
赤ちゃんをひとりにすること(Unattended)も禁止されており、保護者・撮影者のどちらかが常に赤ちゃんのそばにいることが求められます。
室温については、新生児は体温調整が未発達なため、裸や薄着での長時間撮影は低体温症のリスク、厚着すぎると熱中症のリスクがあります。室温・衣着のバランスを常にチェックすることがガイドラインで推奨されています。
参照: https://yonka.co.jp/anzendaiti/https://ertisapni.com/safety/
5. 海外の安全ガイドが言っていること
英語圏・欧州の安全ガイドラインは、医師・助産師・小児専門の知見を踏まえた上で、ポーズ・スタジオ環境・撮影プロセスを厳しく規定しています。
ポーズ・首・体の姿勢
「首を過度に伸ばす」「横にねじる」ポーズは頸椎への負担が大きく避けるべきであると明記されています。無理なポーズや極端な姿勢は「赤ちゃんの体を操る行為」として問題視されており、自然な丸まり姿勢を尊重した「中立・自然なポーズ」だけが推奨されています。
参照: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7758610/
スタジオ・撮影環境に関する規定
「赤ちゃんをひとりにしない(Unattended)こと」は海外でも徹底されており、転落・落下のリスクがある場所では常に保護者・撮影者・アシスタントの誰かがそばにいることが明記されています。
道具・小物については、尖った物・ガラス製品・壊れやすいプロップスの使用は禁止。カメラマン自身もストラップを着用して機材の落下を防ぎ、赤ちゃんの真上から高所撮影を行わないことが規定されています。
参照: https://www.thelittleoakstudio.com.au/blog/essential-guide-posing-newborn-safety
撮影のプロセス
撮影前・撮影中に赤ちゃんの体調と反応を常にチェックすることも共通した基準です。泣く・顔の色が変わる・ぐったりする・呼吸が不規則など、異常のサインがあれば即撮影中止とすることが原則とされています。撮影時間についても「赤ちゃんが機嫌を崩すまで」「一度に長時間撮影しない」を原則とするスタジオが多くあります。
参照: https://tiffanybradleyphotography.com/how-we-ensure-newborn-photography-safety-in-every-session/
6. 日本・海外ガイドの共通ポイント
項目 | 両方のガイドに共通する内容 |
ポーズ | うつ伏せ・顔が埋まるポーズ・無理に首や体を曲げるポーズは禁止。自然な姿勢を尊重する |
支え・見守り | 床から30cm以上高い場所では常に手で支える。赤ちゃんをひとりにしない(Unattended禁止) |
撮影環境 | 室温・衣着・照明・音・衛生・プロップスの安全を継続的に管理する |
異常時の対応 | 体調・反応の異常があれば即撮影中止。万が一の事故に備えた保険加入や安全講習を推奨 |
参照: https://yonka.co.jp/kiken/https://hinaninngyou.com/blogs/maternity/falsehttps://www.thelittleoakstudio.com.au/blog/essential-guide-posing-newborn-safetyhttps://tiffanybradleyphotography.com/how-we-ensure-newborn-photography-safety-in-every-session/https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7758610/https://www.newbornsafety.jphttps://www.newbornsafety.jp/%E3%83%9E%E3%83%9E%E3%81%B8%E8%B3%87%E6%A0%BC%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6
7. 安全なカメラマンを選ぶための確認ポイント
ニューボーンフォトのカメラマンを選ぶ際、うつ伏せポーズや頬杖ポーズを「行いません」と明言しているかどうかは、基本的な安全意識の指標になります。日本新生児撮影安全協会(JNSA)などの安全資格を取得しているか、万が一の事故に備えた保険に加入しているかも、事前に確認できると安心です。
参照: https://www.newbornsafety.jphttps://www.newbornsafety.jp/%E3%83%9E%E3%83%9E%E3%81%B8%E8%B3%87%E6%A0%BC%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6
撮影スタイルの面では、赤ちゃんの自然な姿勢や表情をそのまま記録するライフスタイルスタイルは、ポーズのリスクがそもそも生じない撮影方法として、安全性の観点からも各ガイドラインで言及されています。
まとめ
ニューボーンフォトをめぐる事故は、転落・脱臼・チアノーゼ・機材落下・セルフ撮影でのヒヤリハットなど複数の形で報告されており、いずれも「適切な知識のないままポーズをとらせる」「支えなしで高い場所に置く」「異常サインを見逃す」といった点が共通の要因として挙げられています。日本・海外の安全ガイドラインは、こうした事故の発生を受けて無理なポーズの禁止・撮影環境の管理・赤ちゃんをひとりにしないことを共通して求めており、撮影を検討する際はカメラマンの安全への姿勢・資格・保険の有無を事前に確認することが重要な判断材料になります。